世界の政治経済をシミュレーションできるソフトウェア「ヒミコ」。インターネット上で知り合ったハッカー集団の手によるものである。ソフトウェアを起動させるためには、ある条件の元に抽出された男女が鍵となる。
鍵として選ばれた定年退職男に、ソフトウェアを利用したい組織から魔の手が伸びる。
と、ハイテク・スリラー。コンピュータが暴走するといった古臭い物でなく、あくまでも人間が主役である。流石は大沢在昌先生、安直でない設定が素晴らしい。「イーグル・アイ」なんぞとは雲泥の差だ。現実的には、かなり無理はあるけど。
しかし、本作、先生にしては珍しく説教臭い。初老の主役の男に、先生の思想をすべて語らせているようだ。ほとんど全ての登場人物と人生論を交わしている。そういうことなんで、上下の長編であるが、本編の半分ぐらいが説教なので、ストーリーとしては起伏もあまりなく、最期の終わり方も唐突である。
デビュー作「野獣駆けろ」の青臭さに対して、逆に爺臭い、加齢臭が漂う作品になってしまった。
青臭いのよりは、勿論面白いのだが、先生の作品としては落胆したと言わざるを得ない。
お勧め度:☆☆★ 説教臭い度:☆☆☆★ 俺度:☆☆★
キャスティングしてみた。